受け入れたわけではなく、やむ無くのみ込まざるを得なく追い込まれて、
Jun.15.2006
夜、鴉の夢で目を覚ます。
そこで気になり深夜、深瀬昌久の写真集を久々に開く。見ていると鉛のように胃が重くなってくる。 呪いのような、いや根源的な孤独。やはり凄い、凄すぎる。地獄。
眠れなくなり、漱石を読む。
... 烏が一疋下りている。 翼をすくめて黒い嘴をとがらせて人を見る。 百年碧血の恨が凝って化鳥の姿となって長くこの不吉な地を守るような心地がする。
吹く風に楡の木がざわざわと動く。 見ると枝の上にも烏がいる。 しばらくするとまた一羽飛んでくる。どこから来たか分らぬ。 傍に七つばかりの男の子を連れた若い女が立って烏を眺めている。 (中略) 小供は女を見上げて 「鴉が、鴉が」 と珍らしそうに云う。
それから 「鴉が寒むそうだから、麺麭をやりたい」 とねだる。 女は静かに 「あの鴉は何にもたべたがっていやしません」 と云う。 小供は 「なぜ」 と聞く。
女は長い睫の奥に漾うているような眼で鴉を見詰めながら 「あの鴉は五羽います」 といったぎり小供の問には答えない... (夏目漱石/倫敦塔)

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